「でも忘れていったって、音無さんはどこにこれを……?」
顔を上げて尋ねようとした。
だけど、目の前にいたはずの高崎先輩の姿は、すでにどこにもない。
高崎先輩が立ち去る気配すら、全く感じなかったのに。
俺は不思議に思いながらも、近くにあったベンチに腰掛けて、心の中で音無さんに(ごめん)と謝ってから、ゴムバンドをはずして手帳を開いた。
開かれたページには、こう書かれていた。
『4月10日 今日は浅羽くんに、はじめて自分から話しかけることができた。好きって思いを伝えることもできた。すっごく緊張したけど、もう後悔はしたくないから』
(これって、はじめて声をかけられた日のことだよな?)
読み進めていくと、そこには、音無さんと俺に関することばかりがつづられていた。



