――そして、翌朝。
母さんも無事に退院できることになったので、手続きを済ませている間、俺は手持ち無沙汰で椅子に座って待っていた。
何となくスマホを見れば、一本の不在着信が表示されていることに気づいた。
かかってきたのは数分前で、知らない番号からだ。
不審に思っていれば、同じ番号からまた電話がかかってくる。
出てみれば、どこかで耳にしたことのある声が鼓膜をゆらした。
「もしもし、浅羽くんで間違いないかな?」
「そうですけど……」
「俺は高崎透。突然電話しちゃってごめんね」
「……いえ、それはかまいませんけど……」
どうして俺の番号を知っているのかと聞こうとすれば、それよりも早く、高崎先輩が声を発した。
「音無さんのことで、聞きたいことがあってね」
「音無さんのことで?」
そして、続けられた言葉に――俺は一瞬、呼吸をするのも忘れてしまうほどの、大きな衝撃をうけた。
「――音無さん、家に帰ってないらしいんだ。何か知らないかな?」



