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受付で言われた病室を目指して歩いていれば、階段から下りてくる母さんの姿が見えた。目を覚ましたみたいだ。
だけどその足取りは、ふらついているように見える。
何だか心配になって、歩く速度を上げて階段の方に向かっていれば――足を踏み外した母さんが、階段から転げ落ちてきた。
「っ、母さん、無事!?」
とっさにその身体を受けとめた俺は、つい声を荒げてしまった。
まだ状況が把握できていないのか、俺の腕の中で目を白黒させていた母さんは、ようやく自分が階段から落ちたという事実に気づいたらしい。
「うん、だいじょうぶ。……ごめんね、私が家にいなくて、蒼空が心配してると思って、早く連絡しないとって思って……」
矢継ぎ早に話す母さんは、気が動転しているみたいだ。
その背をそっとなでてから、手を貸して二人でその場から立ち上がる。



