「浅羽くん、ここにいた……!」
俺がスマホを耳に当てていたのを見て、通話していたことを察したんだろう。
「もしかして、病院から?」
「うん、そうだけど……」
――だけど、どうして通話相手が病院だと分かったんだろう。俺はそんなこと一言も言っていないのに。
不思議に思っていれば、音無さんは真剣な目をして、俺をまっすぐに見つめてくる。
「浅羽くん。お願いだから、今すぐ病院に行って」
「え?」
「お母さん、倒れたんだよね?」
「そうだけど……何で音無さんがそのことを知ってるわけ?」
「それは……また今度、ちゃんと説明するから。とりあえず今は、すぐに病院に向かってほしいの」
「別にただの疲労だから。大事には至らなかったって言ってたし、問題ないよ」
「浅羽くん……お願い。今日は、お母さんのそばについていてあげてほしいの」
音無さんは、少しも引く気はないみたいだ。
俺がうなずかなければ、無理やりにでも病院に連れていかれそうだ。



