「……そういうこと。本当はその人と行く約束してたんだ」
そこには、黒いシャツにジーパンというラフな格好をした浅羽くんが立っていた。
「え? ううん、高崎先輩とはぐうぜん会っただけで……浅羽くんこそ、藤野先輩といっしょにきてるんじゃないの?」
七夕祭りに、浅羽くんは藤野先輩ときていたはずだ。
それは間違いない。だって過去でもそうだったから。
だけどいくら辺りを見渡しても、藤野先輩の姿は見えない。
ここまで走ってきたのか、少し乱れていた呼吸を整えた浅羽くんは、高崎先輩とわたしを順に見てグッと眉をしかめたかと思えば、そのまま背を向けてしまう。
「……邪魔してごめん」
「え、浅羽くん? ちょっと待っ……」
浅羽くんはわたしの言葉を最後まで聞くことなく、この場を立ち去ってしまった。



