「音無さんもお祭りにきてたんだね。浴衣、すごく似合ってるよ」
「ありがとうございます!」
わたしは今日、水色の浴衣をきている。
お母さんが着付けてくれたこの浴衣は、デパートでひと目見て気に入ったものだ。
きれいな空を連想するこの色を見て、すぐに浅羽くんを思い出したから。
――浅羽くんは今ごろ、藤野先輩とお祭りを楽しんでるんだろうな。
分かっていたことだけど、それでも、少しだけ。ほんのちょっとだけ、胸が痛む。
わたしも浅羽くんといっしょにお祭り、行ってみたかったなぁって。
「音無さん、だいじょうぶ?」
「……あ、はい。だいじょうぶです! すみません、ボーッとしちゃって」
心配そうな顔をした高崎先輩に顔をのぞきこまれる。
――その時。
さがしていた人物の声が、耳に届いた。



