「っ、もう! そういう時は黙って行けばいいの! 蒼空のそういう優しさは、かえって女の子を傷つけることもあるんだからね。覚えておくように!」
「は? どういう意味だよ」
「いいから! さっさと行く!」
目をキッとつり上げたみやびは、俺の背中をぐいぐい押してくる。
「……本当に行ってもだいじょうぶなの?」
「うん、だって友達もきてるし。合流するから全然問題ない!」
「……わかった」
「まぁさ、少しの時間だったけど、久しぶりに蒼空と七夕祭りにこれてうれしかったよ」
「……うん。みやび、ありがとな」
物理的にも精神的にも背中を押してくれたみやびにお礼を言って、俺は音無さんをさがすために、人混みの中を進んでいく。
「……はぁー。伝える前に振られちゃったなぁ」
走り去る俺の背中を見つめながら、みやびがさみしそうに笑っていたことに――俺が気づくことはなかった。



