「あの、浅羽くんは英語って得意ですか? わたしはすっごく苦手で、なのに今日は小テストがあるんですよ……!」
一週間が経過した今でも、音無さんは毎日のように声をかけてくる。
そして、学校の授業のことなど、こうして他愛のない話をふってくる。
「俺は、英語は得意な方。小さい頃、親の仕事のつごうで海外にいたことがあるから」
「あ、たしかアメリカにいたことがあるんですよね!」
「……何で知ってるの? 俺がアメリカに住んでたって」
小さい頃の話なんて、だれかに話した覚えはないんだけど。音無さんは当然のように知っているみたいだ。
不思議に思って聞いてみれば、肩をビクリとはねあげて、あわて始める。
「え!? えーっと、それは、その……」
音無さんは「しまった!」というような顔をして、視線をさまよわせている。
どうやら音無さんは、ごまかしたりウソをついたりすることが苦手な性格らしい。



