「え、そうなの?」
「はい! 幼馴染同士、水入らずで楽しんできてください!」
「……は? いや、俺はそんなこと……」
「わたしはこっちゃんと行く約束をしてるんだ。会えたら声をかけるね! あ、それじゃあわたしは用があるから、お先に失礼します!」
音無さんは俺の言葉を最後まで聞くことなく、走っていってしまった。
とっさにのばした手は、音無さんを引き止めることもできずに、力なくたれ下がる。
「……意味わかんねぇ」
続けたかった言葉をグッとのみこんだ俺は、胸の中にある重たいものを少しでも軽くしたくて、ふぅっと深いため息をはき出した。
――そして。
「……ぜったいに、浅羽くんのことを救ってみせるからね」
走り去っていった音無さんが、決意のこもった声でつぶやいていた言葉は、だれの耳にも届くことはなく、降り続ける雨の音でかき消されてしまった。



