――つい数日前の帰り道。
音無さんを突き放すような言葉を口にしてしまったという自覚はあったけど、彼女は変わらない様子で話しかけてくる。
だから俺も、あえてそのことには触れずにいつも通りの態度で接していた。
「あ、七夕祭りだ!」
雨除けのビニールがかけられたポスターが、電柱に貼りつけられている。
そこにはきらきらとした星々と神社の鳥居のイラストが描いてあって、目立つフォントで“七夕祭り開催のおしらせ”と書かれていた。
「行きたいの?」
「うん! 毎年行ってるんだぁ。浅羽くんは行ったことある?」
「子どもの頃に行ったことはあるけど……ここ数年は行ってない」
「そっか。毎年境内に飾られてる七夕の飾り、あれ、すっごくきれいだよね」
音無さんはその時の光景を思い出しているのか、楽しそうに目をかがやかせている。



