「あの、だから……浅羽くんがご迷惑じゃなければ、これからもこうして声をかけてもいいですか?」
胸の前でにぎりしめられている彼女の手は、やっぱり震えている。
俺が何て答えるのか、不安に思っているみたいだ。
「……別に、声をかけるのに許可とかいらないし。好きにすれば」
俺がそう言ったら、音無さんは安心したように笑いながら「ありがとうございます!」ってお礼を言ってきたんだ。
(……変なやつ)
音無さんみたいに大人しい子は、俺みたいなのには近づきたがらないはずなのに。
まあ多分、ただの気まぐれだろう。好きという気持ちも、一時の気の迷いかもしれない。
数日もすればあきて声をかけてこなくなるだろうと、そう思っていたのだが……。



