「浅羽くんは、藤野先輩と仲良しなんだね」
「別に、ふつうだと思うけど。ただ家がとなり同士で、昔から顔なじみってだけだよ」
「そうなの? でも、藤野先輩と話してる浅羽くんは……」
――すごく、優しい目をしているように見えたよ。
「何?」
「……ううん、何でもない」
「もしかして俺、そんなに変な顔でもしてた?」
「ふふ、変な顔なんてしてないよ!」
「そう?」
そんな話をしながら歩いていれば、あっという間に教室の前に着いてしまった。
あと一時間、授業は残っているけれど、浅羽くんはこのまま帰るらしい。
窓際の自分の席に座って、窓の外をボーッと見る。
考えてしまうのは、やっぱり浅羽くんのことだ。ついさっき見た光景が、頭の中に焼きついて、消えてくれない。



