「それじゃあ、私は行くから! またね」
藤野先輩は浅羽くんにそう言うと、わたしにも手を小さく振ってくれた。
おじぎをすれば、にこりと可愛らしい笑みを返してくれた藤野先輩は、そのまま廊下を歩いて行ってしまう。
「……藤野先輩って、浅羽くんの幼馴染なんだよね? 綺麗だしすごく優しそうだし、すてきな先輩だよね」
突然おとずれた沈黙が何だか気まずくて、とっさに思ったままの言葉を口にしてしまった。
すると浅羽くんは、何故だか怪訝そうな顔になる。
「みやびのこと、知ってるの? というか俺、幼馴染だなんて教えたっけ?」
「か、風の噂で! 聞いたことがあって!」
「ふーん?」
浅羽くんはまだ納得がいかなそうにしていたけど、わたしがこれ以上答える気がないってことが分かると、あきらめてくれたみたい。



