「もういいよ~だ。でも、ご飯はちゃんと食べなさいよ。……で、となりの子は、もしかして蒼空の友達? しかも女の子じゃん! もしかして、彼女だったりして……」
「うっさい。っていうかみやびには関係ないだろ。早く行きなよ」
「はぁ、もー可愛くないんだから」
「いつまでも弟あつかいすんじゃねーよ」
女の人が浅羽くんの頭をなでようとすれば、浅羽くんは眉をしかめてその手を振り払う。
だけど、それも照れ隠しなんだろうなって、わたしはそう思う。
だって彼女は……藤野みやび先輩は、浅羽くんの幼馴染だから。
わたしたちより一つ年上の藤野先輩は、美人で愛想も良くて、誰からも好かれるような優しい性格の人だ。
きっとこの校内で、浅羽くんが苗字ではなく名前で呼ぶ、唯一の女の人。
そして誰よりも、浅羽くんから優しいまなざしを向けてもらえる人。
そして、そんな藤野先輩のことが、浅羽くんはきっと……。



