「俺のこと、幸せにしてくれるんじゃないの?」
「……わたしのことを知ったら、浅羽くんは幸せになるの?」
「うん」
「どうして?」
「どうしてって……俺も、音無さんといっしょにいるのが楽しいから。だから音無さんのこと、もっと知りたいって思う」
「……そういうこと平然と言っちゃうんだ」
「だって事実だし」
「……浅羽くんってさ、ずるいよね」
「やっと気づいたんだ?」
二ッと笑って返せば、へにゃりと眉を下げた音無さんも、仕方なさそうに笑う。
「音無さんと話すようになってからさ、学校にくるのも悪くないかなって思えるようになったんだよね。だから……ありがと」
「……うん。どういたしまして」
はにかんだ音無さんの顔は、夕暮れの茜色にそまっている。
――その表情を、ずっと見ていたいと思った。
この時間が、いつまでも続けばいいのに、と。
「……帰ろっか」
「うん!」
いつも通りの帰り道。
好きなものや、苦手なこと。最近ハマっていることや、楽しかった思い出。
そんな色々な話を、音無さんはたくさん聞かせてくれた。
グンと距離が縮まった気がして、うれしくなったことは――何だか気恥ずかしいから、君には秘密にしておくことにする。



