「お巡りさん、あそこです! あそこで男の子たちがケンカしてて……早く止めてください!」
向こうの曲がり角から姿をあらわした音無さんは、姿は見えないけど、後ろにいるらしい警察官に声をかけている。
「やべ、あの女、サツを呼んできたみたいだ!」
「早く逃げるぞ!」
絡んできた男たちは、バタバタと足音を立ててこの場を立ち去っていく。
そして、男たちの姿が完全に見えなくなった後。
「……よかったぁ、上手くいって」
音無さんは、安心した様子で笑みをもらす。
近づいてきたのは音無さん一人だけで、そばに警察官らしき大人の姿は見えない。
「だと思った」
予想が当たったことに、俺は口角を上げた。
音無さんは男子高校生たちを怯ませるために、警察官を連れてきたとはったりをかけたんだろう。
……また、彼女に助けられてしまった。



