「音無さん。悪いけど先に帰ってくれる?」
「でも……」
「いいから。俺はだいじょうぶだよ」
俺はけっこうケンカが強い方らしくて、高校生相手にも負けたことはない。
でも、さすがに音無さんの前で暴力をふるう姿は見せたくない。
怖がらせたくないし。
俺と高校生たちを交互に見て不安そうに瞳をゆらしていた音無さんだったけど、俺がだいじょうぶだと伝えれば、小さくうなずいて走っていった。
「何だよ、女は逃がして、自分はヒーロー気取りってかぁ」
「浅羽くん、かぁっこい~」
また、ぎゃははと耳障りな笑い声を上げている男子高校生を前に「はぁ」とため息を漏らせば、目の前にいる男たちはピタリと笑うのを止めた。



