「っていうか、音無さんのほうこそ……どこか怪我してない?」
「うん、わたしは平気だよ」
「……ウソ。膝すりむいてる」
「えっ、あ、本当だ。でもこんなの怪我したうちにはいらないよ」
音無さんはそう言うけど、その右ひざには薄っすら血がにじんでいて、俺の目には痛々しく見える。
「……助けてくれてありがとう。だけど、何であんな無茶したの」
「え?」
「今回はすり傷程度ですんだけど……もしかしたら、俺のかわりに音無さんが大怪我してたかもしれないよね」
音無さんが俺を庇ってくれたのはわかるけど、それでも……。
植木鉢が地面に落下した音を聞いた時、肝が冷えた。
これが俺に当たっていた時のことよりも、音無さんに当たっていたらって……そう考えるだけで、胸がぐしゃりと握りつぶされるような痛みを感じた。
だから、つい、責めるような言い方をしてしまった。
音無さんは俺を助けてくれたのに。



