――音無さんは、俺のどこを好きになったんだろう。
そんな疑問が浮かんだけど、それを直接聞くのは何となく憚られて、口に出すことはしなかった。
「あ!」
音無さんが、空を指さす。
「浅羽くん、見てください! 飛行機雲です」
指の先をたどれば、確かに飛行機雲が見えた。
青い空に、真っ白な線が一本、どこまでも遠く伸びている。
だけど先に通過してできた雲は、どんどん薄くなって消えかけているのが分かる。
「ほんとだね」
「実はわたし、小学校の時まで、あの飛行機雲に本当に乗れるんだって思ってたんです。だけど友達にその話をしたら、すっごく笑われちゃって。あれは飛行機が通ったあとにできるただの雲なんだよって」
音無さんは恥ずかしそうにしながら、過去の思い出を話してくれる。
「……まぁ確かに、あの飛行機雲に本当に乗れたら、最高だよね。ふわふわしてて乗り心地もよさそうだし。どこまでも行けそうだし」
「浅羽くんは、どこか行ってみたいところがあるんですか?」
音無さんが、興味深そうな目をして尋ねてくる。



