「浅羽くん、見つけました!」
中庭の奥にある木の、裏側。
ここは校舎からも見えづらいから、俺のサボりスポットの一つになっていた。
木陰になっているそこでぼんやりと座っていれば、ひょっこりと現れたのは音無さんだ。
「今、授業中だけど。何でいるの?」
「それは浅羽くんにも言えることですからね!」
笑った音無さんは、体操着をきている。
「わたしのクラスは体育だったんですけど、盛大にコケてしまって。保健室に行ってきたところなんです」
そう言って、膝を見せてくれた。
そこにはかなり大きなカットバンが貼ってある。だいぶ派手に転んだらしい。
「ドジだね」
「うっ、本当にその通りで……で、でもわたし、走るのはけっこう得意な方なんですよ!」
両手を握りしめてガッツポーズをしてみせた音無さんは、この場から立ち去る気配がない。



