「っ、どうして……?」 「……音無さんが、教えてくれたんだよ」 近づいて、ふるえている小さな身体を、そっと抱きしめる。 ……よかった。ちゃんと触れることができる。温かい。 そんな当たり前のことが、たまらなくうれしくて、涙がこぼれてくる。 「ねぇ。俺の気持ち、聞いてくれる?」 「っ、うん」 「俺さ、音無さんのことが――」 この時、俺の気持ちを聞いてくれた音無さんが、泣きながら笑っていたその表情を、俺は一生わすれない。 覚えていたいと思ったんだ。