年に一度だけ、織姫と彦星が会えると言われている特別な日から、月日はあっという間に流れていき、とうとう夏休みに入った。
家の外に一歩出れば、むわりとした熱気が身体にまとわりついてくる。
だけど今日は時折風が吹いているから、まだマシかもしれない。
どこかの家の風鈴が、チリンと涼やかな音を響かせている。
「蒼空」
家を出てすぐのところで、みやびとばったり会った。
制服姿の彼女は受験生だ。これから学校へ行って夏季講習を受けるのだろう。
「またあそこに行くの?」
「うん」
「……そっか。でも、水分はしっかりとること。熱中症には気をつけてね」
「分かった」
その場でみやびと別れて、俺は一人で歩き出す。



