「まーた見てるの? あきないねぇ」
教室から窓の外を見ていれば、こっちゃんがあきれた顔をして声をかけてくる。
黒髪ショートカットで背の高い彼女は、小林琴美ちゃん。
わたしは“こっちゃん”って呼んでいる。
昨年から同じクラスで、それからずっと仲良しなの。
こっちゃんはバスケ部なんだけど、バスケが上手なのはもちろん、運動神経がすっごくいいんだ。
それに、明るくて優しくて、いっしょにいてすごく楽しいし……わたしの自慢の親友なんだよ。
「うん! あきることなんてないよ」
こっちゃんにそう返しながら、もう一度窓の外を見る。
わたしの視線の先にいるのは、浅羽蒼空くん。
同じ中学二年生で、となりのクラスの男の子。
そして、わたしの好きな人。
カッコよくて、優しくて、自分をしっかり持っている、まっすぐな男の子。
そういうと、こっちゃんは「優しくはないでしょ」って言うんだけど……そんなことないんだ。
わたしはね、知ってるの。
浅羽くんが、すっごくすっごく優しい男の子だってこと。



