愛しいあなたに紅い花を

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「……美柚、梨佳。そいつ誰だ。」





入学式が終わり、半日で解散となった今日。





私の目の前には、綾藤玲雅──────帝華総長がいた。





お姉ちゃんの部屋に飾ってあった写真に写っていた人。





お姉ちゃんをたくさん笑顔にしてくれた人。





お姉ちゃんをとっても幸せにしてくれた人。





────そして、お姉ちゃんを地獄に突き落とした人。





彼を、探してた。





どうやって近づこうか、幾度も考えた。





多少の危険も覚悟してたのに、まさかこんなにも早く楽に会えるなんて。





昂る気持ちを抑えて、きゅっと美柚の服の袖を掴む。





『み、美柚ちゃん、この人たちって…』





「もうれいくん!そんなに怖い顔しないでよ!」




美柚は腰に手を当てて、頬を膨らませながら綾藤玲雅に近づく。




「綾藤、この子は水瀬あざみ。私達と友達になったの。」





梨佳の説明に、綾藤の眉が僅かに寄った。





背中を嫌な汗が流れる。




もしかして、お姉ちゃんから私の名前を聞いていた?




ドクドクと不自然に心臓が脈打つのを感じながら、美柚の袖を掴む指に力を入れる。




「…...えっ、と、水瀬あざみ、です。よろしくお願いします。」




下げていた目線を、名前の部分だけ綾藤に合わせる。




......少し人見知りなお姉ちゃんは、初対面の人と会う時、こうしていた。




誰よりも可愛かったお姉ちゃんは、その仕草だけで相手に好かれることも多かった。




私はお姉ちゃんのようにはなれないけれど、こうした小さな仕草から、綾藤の頭の隅にあるお姉ちゃんの記憶を少しでも引き出せれば。




私にだって、綾藤に、帝華に、近づくチャンスが訪れるのではないか。




そんな期待を胸に抱きながら、もう一度、下げていた目線を綾藤に向ける。