──────────〜〜♪〜〜♪
無機質なそれは、今までの生活全てを壊す音だった。
『───────はい』
普段ならないそれに若干の不信感を覚えつつも耳に当てる。
「秋花あざみさんのお電話でよろしいでしょうか?」
淡々とした口調で、まだ伝えていない私の名前を聞かれ、スマホを握る手に無意識に力が入る。
『.....そう、ですけど.....』
「私、雪花警察署の安藤と申します。...実は先程、秋花ももさんが──────────」
突然の警察からの電話と、最愛の姉の名前。
そしてその後告げられた言葉に、私はぺたりと座り込んだ。
だって、ねえ、なんで、そんなのありえない。
耳に当てたままのスマホから、私の名前を呼ぶ声が聞こえる。
「──────────ざみさん、あざみさん!大丈夫ですか?」
なにも理解が追いつかないまま、無理やり言葉を発する。
『.......はい、大丈夫、です。ご迷惑を、おかけして...すみません。すぐ...向かい、ます。』
そのあともなにか警察の方が言っていた気がするけれど、言葉が音のまま頭をすり抜けていった。
『.........花房総合病院』
そうだ。とにかく今は、病院に行かないと。
力の入らない体を無理やり立たせる。
なにも考えられないまま、近くにあったスクールバックを掴み立ち上がる。
『.......おねえ、ちゃん』
無意識に漏れたその言葉に自分でも気づかないまま、ローファーを履いて外に出た。
大通りに出てタクシーを拾い、行き先を告げる。
「.......お嬢ちゃん、大丈夫かい?」
運転手のおじいさんが、バックミラー越しに私を見る。
初対面の人に心配されるほど、私は酷い顔をしているのだろうか。
『.........大丈夫、です。そう、大丈夫.......』
半分。いや、9割が自分へ言い聞かせる言葉だった。
そう、大丈夫。
──────────なにが?何が大丈夫なの?
だって、そんなわけない。
──────────でも、警察から連絡があったじゃん。
違う。きっと、何かの間違いにきまってる。
──────────警察が?自分の名前も、姉の名前も合っていたのに?
ぐるぐる、頭の中で自問自答を繰り返す。
だって、だってそうじゃなきゃ。
信じられない、信じたくない。
昨日まで元気だった。
今朝だって、笑顔で、行ってらっしゃいって。
.......そう、言っていたのに。
信じられない。信じたくない。信じられるわけない。
──────────お姉ちゃんが、死んだ、なんて。


