うしろの正面だーあれ




救急車の中では、難しい言葉が飛び交っていた。



放心状態の咲子には到底 理解出来ないような、呪文みたいな言葉。






そんな咲子に気付いたのか、救急隊員の1人が、『名前を呼び掛けてあげて』と優しく言った。



隆史は震える声で ずっと呼び掛けていた。



しかし、咲子には声を出すことすら出来なかった。



その言葉さえ、咲子の耳には届いていないのだから――…