香水が嫌いな沙良からは、ナチュラルな匂いがする。
綺麗に手入れされたツヤツヤな髪から香るシャンプーの匂いは、俺の理性ギリギリ。
理性を保つ為に腕に力を入れたら、華奢な体が壊れそうで何だか怖かった。
全てを失う覚悟も、本当は出来ていない。
色んなことが、怖かった。
そんな気持ちを感じ取ったのか、俺の腕の中で、沙良は不安げに横を向いた。
「憂…震えてる…。」
「…分かんねぇ…。何が正しいのか…これが正しいのか…。」
「…うん。
だけど…あたし、今 幸せだよ…?憂に抱きしめてもらえて、幸せ。」
その言葉に、一瞬 身動きがとれなくなった。
単純に、嬉しかった。
だけど、誰かが幸せなら、別の誰かが不幸せになることだってあるんだよ。
それが、今の俺と、兄貴の関係。


