久しぶりに恋バナなんてしたから恥ずかしい。顔が熱くなるのを感じながら廊下を歩いていると、曲がり角で白衣を着た先生と鉢合わせた。
養護教諭の詩織先生だ。いつも保健室にいて、具合の悪い生徒を看病してくれるんだ。
年齢は二十代前半。ショートカットの背の高い美人さんで、私にとっては憧れの存在だ。私もいつか詩織先生みたいな素敵なオトナになりたいなぁ。
「こんにちは、詩織先生」
「こんにちは~」
私たちが声をかけると、詩織先生は優しい笑顔を浮かべた。
「こんにちは。来栖さん、宮下さん」
今日も笑顔が素敵。ほわほわとした空気に包まれていると、詩織先生が何かを思い出したかのように尋ねてきた。
「そういえば、来栖さんは四月からひとり暮らしをしているんだっけ? おうちのことは大丈夫? 困ったことはない?」
私がひとり暮らしをしていることは、先生たちも知っている。だからこうして時々気にかけてくれるんだ。
「はい。今のところは困ったことはありませんよ」
「本当に? ご飯はちゃんと食べている?」
ギクッ……! 昨日はカップ麺でした、なんて言ったら怒られちゃうかな?
「はい、ちゃんと食べてますよ」
ぎこちなく笑って誤魔化すと、詩織先生は心配そうに眉を下げた。
「来栖さんはしっかり者だから、他の先生方もあまり心配していないようだけど、やっぱりひとりは大変でしょう?」
確かにひとりで家事をこなすのは大変だけど、忙しい先生たちに余計な心配をかけたくない。ちゃんと生活しているところをアピールしないと。
「私、料理も掃除も洗濯も得意なので大丈夫ですよ!」
拳を握りながらはっきり言い切ると、詩織先生は安心したように頬を緩ませた。
話はこれで終わりかと思いきや、詩織先生は人差し指を立てて真面目な表情を浮かべる。
「来栖さん、これだけは覚えておいて。成長期は健康的な身体を作るためにもバランスの良い食事をとらないといけないの。炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルの五大栄養素をしっかりとれる食生活を心がけてね」
詩織先生はポンと私の肩を叩くと、保健室に向かっていった。取り残された私は、詩織先生の後ろ姿をぼんやり眺める。
健康のためにバランスよく食事をとらないといけないことは分かっている。だけど炭水化物とかタンパク質とか言われたって分からないよ。結局なにをどれくらい食べればいいの?
質問したかったけど、すでに詩織先生の姿は見えなくなっていた。
養護教諭の詩織先生だ。いつも保健室にいて、具合の悪い生徒を看病してくれるんだ。
年齢は二十代前半。ショートカットの背の高い美人さんで、私にとっては憧れの存在だ。私もいつか詩織先生みたいな素敵なオトナになりたいなぁ。
「こんにちは、詩織先生」
「こんにちは~」
私たちが声をかけると、詩織先生は優しい笑顔を浮かべた。
「こんにちは。来栖さん、宮下さん」
今日も笑顔が素敵。ほわほわとした空気に包まれていると、詩織先生が何かを思い出したかのように尋ねてきた。
「そういえば、来栖さんは四月からひとり暮らしをしているんだっけ? おうちのことは大丈夫? 困ったことはない?」
私がひとり暮らしをしていることは、先生たちも知っている。だからこうして時々気にかけてくれるんだ。
「はい。今のところは困ったことはありませんよ」
「本当に? ご飯はちゃんと食べている?」
ギクッ……! 昨日はカップ麺でした、なんて言ったら怒られちゃうかな?
「はい、ちゃんと食べてますよ」
ぎこちなく笑って誤魔化すと、詩織先生は心配そうに眉を下げた。
「来栖さんはしっかり者だから、他の先生方もあまり心配していないようだけど、やっぱりひとりは大変でしょう?」
確かにひとりで家事をこなすのは大変だけど、忙しい先生たちに余計な心配をかけたくない。ちゃんと生活しているところをアピールしないと。
「私、料理も掃除も洗濯も得意なので大丈夫ですよ!」
拳を握りながらはっきり言い切ると、詩織先生は安心したように頬を緩ませた。
話はこれで終わりかと思いきや、詩織先生は人差し指を立てて真面目な表情を浮かべる。
「来栖さん、これだけは覚えておいて。成長期は健康的な身体を作るためにもバランスの良い食事をとらないといけないの。炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルの五大栄養素をしっかりとれる食生活を心がけてね」
詩織先生はポンと私の肩を叩くと、保健室に向かっていった。取り残された私は、詩織先生の後ろ姿をぼんやり眺める。
健康のためにバランスよく食事をとらないといけないことは分かっている。だけど炭水化物とかタンパク質とか言われたって分からないよ。結局なにをどれくらい食べればいいの?
質問したかったけど、すでに詩織先生の姿は見えなくなっていた。
