私立緑ヶ丘学園は、地元でも人気の中高一貫校だ。お城のような豪華な校舎と、真っ白なブレザーはみんなの憧れの的。私もこの学校に入るために、たくさん勉強したんだ。
入学してからは仲の良いお友達もできたし、先生も優しい。私にとっては大好きな場所だよ。
二年A組の教室に入ると、ゆるふわセミロングの女の子がひらひらと手を振って迎えてくれる。親友の花梨ちゃんだ。
「育ちゃん、おはよう」
ほのぼのとした笑顔を見ていると心が和む。私はスクールバックを持ったまま、花梨ちゃんの席に駆け寄った。
「おはよう、花梨ちゃん!」
元気よく挨拶すると、花梨ちゃんからもう一度微笑みかけられた。
「そういえば、この前育ちゃんがSNSにあげていたイラスト、すごく可愛かったね。ピンクの髪をした人魚さん。ゆめかわですっごく好き」
「本当? そういってもらえると嬉しい!」
テスト勉強の合間に書いたイラストのことだ。エメラルドグリーンの海で泳ぐ、可愛い人魚を描いたの。
イラストを褒めてもらえるのは、すっごく嬉しい。ネットで知り合った人から褒められるのも嬉しいけど、身近な人から褒められるのはもっと嬉しい!
照れ笑いを浮かべていると、花梨ちゃんは両手を合わせながら尊敬の眼差しを浮かべた。
「育ちゃんは凄いよね。イラストのお仕事をして、学校での成績も良くて、そのうえひとり暮らしをしてるんだもん。オトナって感じで尊敬」
オトナという響きには、胸がくすぐられる。デレデレと表情を緩めていると、近くにいた男子にぷくくっと笑われた。
「は? こいつのどこが大人だよ。クラスで一番チビじゃん」
その言葉で、私の顔から笑顔が消える。目の前にいた花梨ちゃんは、アワアワと両手を彷徨わせていた。
周りの男子も便乗して「チビチビ~」と言いながらゲラゲラ笑い出す。さっきまでの楽しい気分が台無しだ。
私はクラスで一番背が低い。背の順ではいつも先頭だった。そのことに少なからずコンプレックスを抱いている。だからチビといわれるのが一番グサッとくるんだ。
こっちだって、好きでチビをやっているわけじゃないんだよ! そう怒鳴ってやりたかったけど、騒ぎを大きくしないためにもスルーしてしまおう。
「行こう、花梨ちゃん」
「う、うん」
私はスクールバックを自分の席に置いてから、教室から飛び出した。
俯き加減で廊下を歩いていると、隣にいた花梨ちゃんが眉を下げながら声をかけてくる。
「育ちゃん、さっきの気にしちゃダメだよ」
花梨ちゃん、慰めてくれているんだ。その優しさで、沈んでいた心がゆっくりと持ち返していく。
「ありがとう、花梨ちゃん! 気にしてないから平気だよ」
私はこれ以上心配かけまいと、明るく微笑んだ。
これでいい。いつまでもくよくよしてたら心配かけちゃうもん。傷ついたことはなかったことにしてしまおう。
すると、花梨ちゃんが少し言いにくそうに話を続ける。
「多分……だけどさ、あの男子、育ちゃんのことが好きなんだよ」
「えっ!? そんなわけないよ」
好きだったら、あんなひどいことは言わないと思う。好きな人は大切にしたいと思うのが普通じゃないの?
「男の子って、好きな子にかまってほしくて意地悪しちゃうこともあるんだよ。うちの弟がそうだもん。幼馴染の女の子が大好きなはずなのに、すぐに意地悪しちゃうの」
「そうなの?」
かまってほしくて意地悪するなんてバカみたい。そんなの逆効果なのに。
「育ちゃんは、おめめぱっちりで、髪もキレイな亜麻色で、身体も華奢だから、ひよこさんみたいで可愛いんだよ。だからあの男子も育ちゃんのことが好きになっちゃったんだと思うよ」
ひよこさんって、遠回しに小さいって言われてるような……。花梨ちゃんに悪気はないんだろうけど。
まあ、それは置いといて、あの男子が私のことを好きだったとしても、こっちから好きになる可能性はゼロだ。
「私は、意地悪なんかしないで、ちゃんと好きって伝えてくれる人を好きになりたいな」
もしもこの先、誰かを好きになるのなら、たくさん愛情を注いでくれる人が良い。その方が、きっと幸せだから。
すると、花梨ちゃんは目を細めながら穏やかに微笑んだ。
「うん。いつかきっと、育ちゃんもそういう人に出会えると思うよ」
そうだといいんだけど……今の私には全然想像できないや。
入学してからは仲の良いお友達もできたし、先生も優しい。私にとっては大好きな場所だよ。
二年A組の教室に入ると、ゆるふわセミロングの女の子がひらひらと手を振って迎えてくれる。親友の花梨ちゃんだ。
「育ちゃん、おはよう」
ほのぼのとした笑顔を見ていると心が和む。私はスクールバックを持ったまま、花梨ちゃんの席に駆け寄った。
「おはよう、花梨ちゃん!」
元気よく挨拶すると、花梨ちゃんからもう一度微笑みかけられた。
「そういえば、この前育ちゃんがSNSにあげていたイラスト、すごく可愛かったね。ピンクの髪をした人魚さん。ゆめかわですっごく好き」
「本当? そういってもらえると嬉しい!」
テスト勉強の合間に書いたイラストのことだ。エメラルドグリーンの海で泳ぐ、可愛い人魚を描いたの。
イラストを褒めてもらえるのは、すっごく嬉しい。ネットで知り合った人から褒められるのも嬉しいけど、身近な人から褒められるのはもっと嬉しい!
照れ笑いを浮かべていると、花梨ちゃんは両手を合わせながら尊敬の眼差しを浮かべた。
「育ちゃんは凄いよね。イラストのお仕事をして、学校での成績も良くて、そのうえひとり暮らしをしてるんだもん。オトナって感じで尊敬」
オトナという響きには、胸がくすぐられる。デレデレと表情を緩めていると、近くにいた男子にぷくくっと笑われた。
「は? こいつのどこが大人だよ。クラスで一番チビじゃん」
その言葉で、私の顔から笑顔が消える。目の前にいた花梨ちゃんは、アワアワと両手を彷徨わせていた。
周りの男子も便乗して「チビチビ~」と言いながらゲラゲラ笑い出す。さっきまでの楽しい気分が台無しだ。
私はクラスで一番背が低い。背の順ではいつも先頭だった。そのことに少なからずコンプレックスを抱いている。だからチビといわれるのが一番グサッとくるんだ。
こっちだって、好きでチビをやっているわけじゃないんだよ! そう怒鳴ってやりたかったけど、騒ぎを大きくしないためにもスルーしてしまおう。
「行こう、花梨ちゃん」
「う、うん」
私はスクールバックを自分の席に置いてから、教室から飛び出した。
俯き加減で廊下を歩いていると、隣にいた花梨ちゃんが眉を下げながら声をかけてくる。
「育ちゃん、さっきの気にしちゃダメだよ」
花梨ちゃん、慰めてくれているんだ。その優しさで、沈んでいた心がゆっくりと持ち返していく。
「ありがとう、花梨ちゃん! 気にしてないから平気だよ」
私はこれ以上心配かけまいと、明るく微笑んだ。
これでいい。いつまでもくよくよしてたら心配かけちゃうもん。傷ついたことはなかったことにしてしまおう。
すると、花梨ちゃんが少し言いにくそうに話を続ける。
「多分……だけどさ、あの男子、育ちゃんのことが好きなんだよ」
「えっ!? そんなわけないよ」
好きだったら、あんなひどいことは言わないと思う。好きな人は大切にしたいと思うのが普通じゃないの?
「男の子って、好きな子にかまってほしくて意地悪しちゃうこともあるんだよ。うちの弟がそうだもん。幼馴染の女の子が大好きなはずなのに、すぐに意地悪しちゃうの」
「そうなの?」
かまってほしくて意地悪するなんてバカみたい。そんなの逆効果なのに。
「育ちゃんは、おめめぱっちりで、髪もキレイな亜麻色で、身体も華奢だから、ひよこさんみたいで可愛いんだよ。だからあの男子も育ちゃんのことが好きになっちゃったんだと思うよ」
ひよこさんって、遠回しに小さいって言われてるような……。花梨ちゃんに悪気はないんだろうけど。
まあ、それは置いといて、あの男子が私のことを好きだったとしても、こっちから好きになる可能性はゼロだ。
「私は、意地悪なんかしないで、ちゃんと好きって伝えてくれる人を好きになりたいな」
もしもこの先、誰かを好きになるのなら、たくさん愛情を注いでくれる人が良い。その方が、きっと幸せだから。
すると、花梨ちゃんは目を細めながら穏やかに微笑んだ。
「うん。いつかきっと、育ちゃんもそういう人に出会えると思うよ」
そうだといいんだけど……今の私には全然想像できないや。

