ソワソワしながら扉の前で待っていると、すぐに銀髪の男の子が戻って来た。手元には、お皿に乗ったおにぎりがある。
「はい。急いで作ったから、具は何も入っていないけど」
「わざわざ作ってくれたんですか?」
まさかそこまでしてくれるとは思わなかった。まじまじとおにぎりを見つめていると、ぐいっとお皿を目の前に突き出される。
「食べて」
「は、はい」
圧が強すぎて断れない。恐る恐る受け取ってから、口に運んだ。
「いただきます」
ぱくっとおにぎりに齧りつく。塩で味付けしたシンプルなおにぎりだけど、噛めば噛むほど甘さが広がっていった。炊き立ての白米で作ったからか、ほんのり温かい。そのぬくもりに、ホッとした。
「美味しい」
にっこり微笑みながら伝えると、男の子はぱちぱちと瞬きをする。あれ? おかしなこと言ったかな? 沈黙が続いた後、男の子は両手を合わせながらふわりと甘く微笑んだ。
「そっか、ありがとう」
「お礼を言わないといけないのはこっちだよ。美味しいおにぎりをありがとう」
ぺこりと頭を下げながらお礼を伝えると、男の子はにこにこしながら頷いた。
「どういたしまして」
どうしてそんなに嬉しそうなんだろう? 不思議に思っていると、男の子がぐいぐいと距離を詰めてきた。
「白米好きなの?」
白米? なんで急にそんなことを聞くの? 戸惑いつつも、キラキラした眼差しで尋ねられると無下にはできない。
「うん、好きだよ」
「うどんとかパスタは?」
「好き、かな……」
「甘いショートケーキは?」
「それは大好き」
正直に答えると、男の子は頬を赤らめながらうっとりとした表情を浮かべた。
「そっか、嬉しいなぁ」
今のどこに喜ぶ要素があったの? ぱちぱちと瞬きをしていると、男の子はトンと胸を叩きながら自己紹介を始めた。
「僕は、藤室天音。君の名前は?」
「来栖育実です……」
自己紹介をすると、天音くんは「あ~!」とこちらを指さす。
「君が育ちゃんか! すっごい偶然! むしろ運命?」
天音くんは興奮したように叫んでいる。なんで?
「私のこと、知っているの?」
恐る恐る尋ねると、天音くんはギクッと口元を引きつらせる。
「あ~、うん、ご近所さんから聞いたんだ~。この近くでひとり暮らしをしている女子中学生がいるって」
目を泳がせながら事情を明かす天音くん。ご近所さんから聞いたというのはおかしくはないのだけれど、天音くんの態度はちょっとおかしい。何かを隠しているような……。
「そ、そんなことよりさ、うちのレストラン、今日からオープンしたんだ。ワンコインで何でも食べられるから、いつでも来てね!」
話を逸らされた? 引っかかったものの、ワンコインで食べられるという情報は聞き捨てならない。
「ワンコインって500円ってこと?」
「通常はそうなんだけど、育ちゃんは特別料金で100円」
「100円!?」
100円なんてコンビニでおにぎりを買うよりも安いじゃん。私だけみんなの5分の1になるというのも驚きだ。
「なんでそんなに安いの?」
気になって尋ねてみると、天音くんはまたしても目を泳がせる。沈黙が続いた後、ボソッと答えた。
「……学割かな?」
中学生、サイコー! 100円でご飯を食べられるのなら、通わない手はないよね。忙しくて料理を作るのが面倒な時も、ここに来ればご飯が食べられるってことだもん。
「それじゃあ、これから通わせてもらうね」
そう伝えると、天音くんの瞳をキラキラさせながら頷いた。
「うん! みんなで一緒にご飯食べようねっ」
みんなで一緒に――
その言葉を聞いた瞬間、ひだまりに包まれたような温かい気分になった。
「はい。急いで作ったから、具は何も入っていないけど」
「わざわざ作ってくれたんですか?」
まさかそこまでしてくれるとは思わなかった。まじまじとおにぎりを見つめていると、ぐいっとお皿を目の前に突き出される。
「食べて」
「は、はい」
圧が強すぎて断れない。恐る恐る受け取ってから、口に運んだ。
「いただきます」
ぱくっとおにぎりに齧りつく。塩で味付けしたシンプルなおにぎりだけど、噛めば噛むほど甘さが広がっていった。炊き立ての白米で作ったからか、ほんのり温かい。そのぬくもりに、ホッとした。
「美味しい」
にっこり微笑みながら伝えると、男の子はぱちぱちと瞬きをする。あれ? おかしなこと言ったかな? 沈黙が続いた後、男の子は両手を合わせながらふわりと甘く微笑んだ。
「そっか、ありがとう」
「お礼を言わないといけないのはこっちだよ。美味しいおにぎりをありがとう」
ぺこりと頭を下げながらお礼を伝えると、男の子はにこにこしながら頷いた。
「どういたしまして」
どうしてそんなに嬉しそうなんだろう? 不思議に思っていると、男の子がぐいぐいと距離を詰めてきた。
「白米好きなの?」
白米? なんで急にそんなことを聞くの? 戸惑いつつも、キラキラした眼差しで尋ねられると無下にはできない。
「うん、好きだよ」
「うどんとかパスタは?」
「好き、かな……」
「甘いショートケーキは?」
「それは大好き」
正直に答えると、男の子は頬を赤らめながらうっとりとした表情を浮かべた。
「そっか、嬉しいなぁ」
今のどこに喜ぶ要素があったの? ぱちぱちと瞬きをしていると、男の子はトンと胸を叩きながら自己紹介を始めた。
「僕は、藤室天音。君の名前は?」
「来栖育実です……」
自己紹介をすると、天音くんは「あ~!」とこちらを指さす。
「君が育ちゃんか! すっごい偶然! むしろ運命?」
天音くんは興奮したように叫んでいる。なんで?
「私のこと、知っているの?」
恐る恐る尋ねると、天音くんはギクッと口元を引きつらせる。
「あ~、うん、ご近所さんから聞いたんだ~。この近くでひとり暮らしをしている女子中学生がいるって」
目を泳がせながら事情を明かす天音くん。ご近所さんから聞いたというのはおかしくはないのだけれど、天音くんの態度はちょっとおかしい。何かを隠しているような……。
「そ、そんなことよりさ、うちのレストラン、今日からオープンしたんだ。ワンコインで何でも食べられるから、いつでも来てね!」
話を逸らされた? 引っかかったものの、ワンコインで食べられるという情報は聞き捨てならない。
「ワンコインって500円ってこと?」
「通常はそうなんだけど、育ちゃんは特別料金で100円」
「100円!?」
100円なんてコンビニでおにぎりを買うよりも安いじゃん。私だけみんなの5分の1になるというのも驚きだ。
「なんでそんなに安いの?」
気になって尋ねてみると、天音くんはまたしても目を泳がせる。沈黙が続いた後、ボソッと答えた。
「……学割かな?」
中学生、サイコー! 100円でご飯を食べられるのなら、通わない手はないよね。忙しくて料理を作るのが面倒な時も、ここに来ればご飯が食べられるってことだもん。
「それじゃあ、これから通わせてもらうね」
そう伝えると、天音くんの瞳をキラキラさせながら頷いた。
「うん! みんなで一緒にご飯食べようねっ」
みんなで一緒に――
その言葉を聞いた瞬間、ひだまりに包まれたような温かい気分になった。

