食育男子! ~擬人化したイケメン栄養素たちに溺愛されています~

翌朝。玄関の全身鏡で身だしなみを確認する。

「髪型よし、制服よし、靴よし」

亜麻色(あまいろ)のストレートロングには寝ぐせひとつ付いていないし、白いブレザーにはシワも汚れもない。ローファーもピカピカだ。よしっ、今日もきちんとしている。これなら誰にも心配されないはず。

スクールバッグを肩から下げると、玄関の棚に置かれた家族写真に挨拶した。

「行ってくるね。お父さん、お母さん」

写真の中では、家族三人が幸せそうに微笑んでいた。

五月の爽やかな風を受けながら、元気よく家から飛び出す。今日は雲ひとつない晴天だ。どこまでも広がる青空を見ていると、清々しい気分になった。さあ、学校へ行こう。走り出そうとしたところで、あることに気付く。

「あれ? お向かいのレストランがオープンしてる?」

うちのお向かいには洋食屋があった。昔はよく家族で通っていたんだけど、三年前に閉店しちゃったんだ。それからはしばらく空店舗だったの。だけど今は、緑色の扉にオープンの札が下がっている。気になって近寄ってみると、黒板スタンドにメニューが書かれていた。

【ひだまりレストラン】
~本日のおすすめセット~
豆腐とワカメのサラダ
チキンのトマト煮込み
いちごのヨーグルトムース
☆ライスorパンを選べます

「わあ、美味しそう!」

私ひとりでは、こんなに手の込んだ料理は作れない。一品作るのが精いっぱいだから。
そういえば、お母さんもバランスの良い食事を作ってくれたっけ。懐かしい気分になりながらメニューを眺めていると、ガチャと入り口の扉が開いた。

「あれ? お客さん? いらっしゃいませ~」

顔を上げると、銀髪の男の子が立っていた。くっきり二重でタレ目がちな、可愛らしい男の子だ。
年齢は私と同じくらいかな? 身長は私よりもちょっと高いけど、男の子にしては小柄な方かもしれない。
こんなに可愛い男の子は、学校でも見たことがない。アイドルみたいだなぁと見惚れていると、ぐいっと距離を詰められた。

「ぼーっとしているけど大丈夫? 朝ごはん、ちゃんと食べた?」

至近距離で顔を覗き込まれて、ドキッと心臓が跳ね上がる。私は猫のように飛び跳ねながら、男の子から距離を取った。

「えっと、その……時間がなくて何も……」

ひとり暮らしを始めてからというもの、朝食をとらずに学校に行くことが増えちゃったんだよね。朝から何か作るのって、すっごく面倒だし。食パンの買い置きもなかったから、何も食べずに出てきちゃった。
私が朝食をとっていないと知ると、銀髪の男の子はむっと頬を膨らました。

「ダメだよ。朝ごはんはちゃんと食べないと。頭が働かなくなっちゃうんだから!」

知らない男の子に怒られちゃった。びっくりして固まっていると、銀髪の男の子はくるっと振り返って扉を開いた。

「待っててね。今、おにぎり持ってくるから」
「え!? そこまでしてもらうわけには……」

遠慮したものの、聞く耳を持ってもらえず……。男の子はバタンと扉を閉めて、店の中に入ってしまった。
どうしよう。ここで待っていた方が良いのかな?