食育男子とデートをしてからは、これまで以上にバランスの良い食事を心がけるようになった。それぞれの栄養素が身体に必要なものだって分かったからね。だけど困ったことに、そのバランスを崩そうとする人がいるの……。
休み時間にイラストを描いていると、天音くんにちょんちょんと背中をつつかれる。
「育ちゃん、クリームパン食べる?」
天音くんは、にこにこ微笑んでクリームパンを差し出してくる。ごくり。美味しそう……!
「ありがとう」
私は勧められるがままにクリームパンを受け取った。
最近はいつもこんな調子なんだよね。天音くん、私に甘いものばかり勧めてくるの。昨日はチョココロネ、一昨日はあんパン、その前はメロンパンだったかな? どれも美味しいんだけど、こんなにもらっちゃっていいのかな?
「食べないの?」
「ううん。いただきます」
今日も断れなかった。だってこんなに美味しそうなんだもん。ふわふわのクリームパンに齧りつくと、濃厚なクリームが溢れてくる。
「甘くて幸せ~」
「えへへ、良かったぁ」
感想を伝えると、天音くんは嬉しそうに頬を緩めた。
甘い菓子パンは大好きなんだけど、そればっかりだとバランスが偏っちゃうよね。食育男子は、バランスの良い食生活をサポートする存在なのに、なんで天音くんは甘いものばかり食べさせようとするんだろう?
もぐもぐクリームパンを頬張りながら考えていると、天音くんはうっとりした表情を浮かべる。
「育ちゃんが美味しそうに食べている時の顔、だぁいすき」
むぐぐっ……! 突然飛び出した大好きという言葉で、クリームパンが喉に詰まりそうになった。トントンと胸を叩いていると、いちごミルクを差し出される。
「大丈夫? これ飲んで」
「ありがと」
ちゅーっとストローで吸って、いちごミルクをごくり。あ、甘い! クリームパンといちごミルクなんて、甘々な取り合わせだよ!
身体の中がお砂糖で支配されてしまいそう。食べているだけなのに、なんだかドッと疲れた。小さくため息をついた時、いつも私をからかってくる男子がぷくくっと笑いだした。
「お前さ、最近太ったんじゃね? ほっぺたパンパンでまんじゅうみたい。ちっちゃいまんじゅうだから、ひよこまんじゅうだな」
はああ!? ひよこまんじゅう? ギョッと目を見開いていると、傍で聞いていた他の男子もゲラゲラと笑いだした。
もう、サイアク。恥ずかしさと怒りが入り交じって泣きそうになっていると、主犯格の男子にクリームパンを奪われた。
「藤室から甘いものばっかもらってるから太るんだよ。自重しろ、デブ」
チビと言われるのだって嫌なのに、そのうえデブなんて……。ショックで言葉を失っていると、天音くんがガタンと音を立てて椅子から立ち上がった。
「そういう言い方はよくないよね」
天音くんが、冷たい声で注意する。普段はにこにこ笑顔の天音くんが怒りを表に出したことで、男子たちは凍り付いた。
「と、藤室?」
主犯格の男子は、口元を引きつらせている。冷え切った空気の中、天音くんはキッと男子を睨みつけた。
「育ちゃんに謝って」
強い口調で命令する天音くん。こんなに怒っている天音くんは初めて見た。私のために怒ってくれたのは嬉しいんだけど、このままだと喧嘩になっちゃうよ。
「わ、私は大丈夫だから!」
急いで天音くんを、男子から引きはがす。すると天音くんは、びっくりしたように振り返った。
「なんで? 嫌なこと言われたら、ちゃんと嫌だって言わないとダメでしょ?」
それはそうなんだけどさ、私が我慢すれば済むことだし。騒ぎを大きくして、みんなに心配かけたくないんだよ。
クラスメイトからの視線が突き刺さる。これ以上、この場にいたら泣いてしまいそうだ。教室で泣くなんて絶対にダメ。
「私、図書委員の仕事を頼まれていたんだ。行ってくるね」
適当な嘘をついて、私は逃げるように教室から飛び出した。
休み時間にイラストを描いていると、天音くんにちょんちょんと背中をつつかれる。
「育ちゃん、クリームパン食べる?」
天音くんは、にこにこ微笑んでクリームパンを差し出してくる。ごくり。美味しそう……!
「ありがとう」
私は勧められるがままにクリームパンを受け取った。
最近はいつもこんな調子なんだよね。天音くん、私に甘いものばかり勧めてくるの。昨日はチョココロネ、一昨日はあんパン、その前はメロンパンだったかな? どれも美味しいんだけど、こんなにもらっちゃっていいのかな?
「食べないの?」
「ううん。いただきます」
今日も断れなかった。だってこんなに美味しそうなんだもん。ふわふわのクリームパンに齧りつくと、濃厚なクリームが溢れてくる。
「甘くて幸せ~」
「えへへ、良かったぁ」
感想を伝えると、天音くんは嬉しそうに頬を緩めた。
甘い菓子パンは大好きなんだけど、そればっかりだとバランスが偏っちゃうよね。食育男子は、バランスの良い食生活をサポートする存在なのに、なんで天音くんは甘いものばかり食べさせようとするんだろう?
もぐもぐクリームパンを頬張りながら考えていると、天音くんはうっとりした表情を浮かべる。
「育ちゃんが美味しそうに食べている時の顔、だぁいすき」
むぐぐっ……! 突然飛び出した大好きという言葉で、クリームパンが喉に詰まりそうになった。トントンと胸を叩いていると、いちごミルクを差し出される。
「大丈夫? これ飲んで」
「ありがと」
ちゅーっとストローで吸って、いちごミルクをごくり。あ、甘い! クリームパンといちごミルクなんて、甘々な取り合わせだよ!
身体の中がお砂糖で支配されてしまいそう。食べているだけなのに、なんだかドッと疲れた。小さくため息をついた時、いつも私をからかってくる男子がぷくくっと笑いだした。
「お前さ、最近太ったんじゃね? ほっぺたパンパンでまんじゅうみたい。ちっちゃいまんじゅうだから、ひよこまんじゅうだな」
はああ!? ひよこまんじゅう? ギョッと目を見開いていると、傍で聞いていた他の男子もゲラゲラと笑いだした。
もう、サイアク。恥ずかしさと怒りが入り交じって泣きそうになっていると、主犯格の男子にクリームパンを奪われた。
「藤室から甘いものばっかもらってるから太るんだよ。自重しろ、デブ」
チビと言われるのだって嫌なのに、そのうえデブなんて……。ショックで言葉を失っていると、天音くんがガタンと音を立てて椅子から立ち上がった。
「そういう言い方はよくないよね」
天音くんが、冷たい声で注意する。普段はにこにこ笑顔の天音くんが怒りを表に出したことで、男子たちは凍り付いた。
「と、藤室?」
主犯格の男子は、口元を引きつらせている。冷え切った空気の中、天音くんはキッと男子を睨みつけた。
「育ちゃんに謝って」
強い口調で命令する天音くん。こんなに怒っている天音くんは初めて見た。私のために怒ってくれたのは嬉しいんだけど、このままだと喧嘩になっちゃうよ。
「わ、私は大丈夫だから!」
急いで天音くんを、男子から引きはがす。すると天音くんは、びっくりしたように振り返った。
「なんで? 嫌なこと言われたら、ちゃんと嫌だって言わないとダメでしょ?」
それはそうなんだけどさ、私が我慢すれば済むことだし。騒ぎを大きくして、みんなに心配かけたくないんだよ。
クラスメイトからの視線が突き刺さる。これ以上、この場にいたら泣いてしまいそうだ。教室で泣くなんて絶対にダメ。
「私、図書委員の仕事を頼まれていたんだ。行ってくるね」
適当な嘘をついて、私は逃げるように教室から飛び出した。
