土曜日。先日の嵐が嘘のように、カラッとした青空が広がっていた。絶好のお出かけ日和だ。
今日は、遊くんと亜実望くんとデートの約束をしている。デートなんて初めてだから、すでにパニックだよ~。ドキドキというよりもハラハラしながら、グリーン公園の前で立ち尽くしていた。

金曜日の放課後、遊くんから11時にグリーン公園に来るように指示された。腹を空かせた状態で来いとも。でも、肝心のデートプランはまだ聞かされていないんだよね。
汚れてもいい服で来いって言われたから、ネイビーのカットソーにデニムのショートパンツで合わせてきたけど、これで良いのかな? きょろきょろと辺りを見渡していると、トンと肩を叩かれる。

「待たせたな、育」
「遊くん!」

振り返ると、派手なパーカーを羽織った遊くんがいた。ストリート系っていうのかな? カラフルな絵具を散らしたようなパーカーは、遊くんの雰囲気によく似合っていた。両手にはスーパーの袋を下げている。中には食材がぎっしり。

「その食材、どうするの?」
「ああ? 食うに決まってんだろ」

どこで……と尋ねようとしたところで、亜実望くんが走ってきた。

「おーい、育! 今日は来てくれてありがとな!」

亜実望くんは、黒地に白のラインが入ったジャージを着ている。ハーフパンツからは逞しいふくらはぎが覗いていた。さすがスポーツマン! 感心していると、亜実望くんも私を上から下まで見つめていることに気付いた。

「どこか変かな?」
「いや、今日の育は可愛いなと思って!」

ニカッと笑いながら褒める亜実望くん。そ、そんなに素直に褒めてくれるんだ。嬉しいけど、恥ずかしいよ~。

「亜実望くんと遊くんも、普段とは違って格好良いね」
「本当か?」
「けっ……お世辞とかいらねーんだよっ」

素直に喜ぶ亜実望くんとは対照的に、遊くんは頭をかきながら視線を逸らしている。あれ? もしかして照れてる?

「んなことより、行くぞ!」

遊くんは雑に手招きをすると、ズンズン進んでいく。ああ、置いて行かれちゃうよ。アワアワしながら、遊くんの背中を追いかけた。

「あのさ、今日は何をするの?」
「ああ? 俺と亜実望が揃ったら、やることはアレしかねーよな」
「だな!」

アレってなに? 遊くんがやけに悪い顔をしているから怖いんですけど。戸惑っていると、にやりと笑った遊くんに肩を掴まれた。

「おい、育。今日は俺と悪いことしようぜ」
「わ、悪いこと!?」

何をするつもりなんだろう? 私、無事に今日を乗り切れるのかな?