しばらくすると、リビングに甘い匂いが漂ってきた。ホットケーキが焼けたのかもしれない。ソワソワしがら待っていると、白いお皿を持った天音くんがやって来た。
「できたよ! ひだまりホットケーキ」
「ひだまりホットケーキ?」
「食べるとポカポカあったかくなるホットケーキだよ! さあ、食べて食べて~」
平皿には、こんがり焼けたホットケーキが二枚重なっている。上にはバターとはちみつがたっぷり。お、美味しそう~!
「いただきます!」
ナイフで一口大に切って、ぱくっと口に入れる。その瞬間、大きく目を見開いた。
はちみつの甘さが幸せを運ぶように身体中を駆け巡っていく。ふかふかの柔らかな生地にも、心がホッした。
美味しい! すごく美味しい! だけどそれだけじゃない。ひだまりに包まれたような、ポカポカとあったかい気分になった。
それにこの味、お母さんが作ってくれたホットケーキによく似ている。材料が同じだから? 私が作っても、同じ味にはならなかったのに不思議。
ホットケーキを食べていると、幸せだった頃の記憶が蘇る。胸がいっぱいになって、再び涙が溢れ出した。
「育ちゃん? なんで泣くの? 美味しくなかった?」
天音くんがギョッと目を見開く。これ以上心配かけないように、私は大きく首を振った。
「違うの。美味しくて……」
どうにか言葉を絞り出す。ダメだな、私。今日は泣いてばっかりだ。
涙を拭ってから、もう一度ホットケーキを口にする。さっきよりも、ちょっとしょっぱい。これはバターの塩気のせいではなさそうだ。私が悲しんでいるわけではないと分かると、天音くんはホッと胸を撫でおろす。
「良かった。気に入ってもらえて」
その後も夢中でホットケーキを食べていると、正面に座る天音くんがとろけるような笑顔を浮かべていた。
「な、なに?」
驚いて尋ねてみると、天音くんははちみつよりも甘い言葉を口にした。
「育ちゃんは僕のこと好きだよね? 僕も育ちゃんのことだぁいすき」
ホットケーキを食べる手が止まる。今、大好きって言った? 天音くんが、私のことを?
これまでも懐かれていると感じることはあったけど、直接好きと言ってもらえたのは初めてだ。素直に気持ちを伝えてくれたのは、すっごく嬉しい。
心臓は破裂しそうなほどに暴れまわっている。顔も熱くて仕方ない。こんなに心を乱されているってことは、私も天音くんのことが……。
気持ちを確かめるため、天音くんと過ごした日々を振り返る。
天音くんと出会った日、一緒にご飯を食べようと誘ってくれたこと。未来の私が病気になってしまうと知った時、食生活をサポートすると約束してくれたこと。クラスメイトから責められた時、機転を利かせてかばってくれたこと。嵐の中、びしょ濡れになって駆け付けてくれたこと。
天音くんは、いつだって優しかった。そんな男の子のことを、好きじゃないはずがない。
「育ちゃん、これからもずっと傍にいようね。育ちゃんを僕で満たしてあげる」
天音くんは愛おしいものを見るように微笑む。そんなに甘すぎる愛情表現をされたら、どうすればいいか分からないよ~!
顔から火が出そうになった時、リビングの扉が大きな音を立てて開いた。
「できたよ! ひだまりホットケーキ」
「ひだまりホットケーキ?」
「食べるとポカポカあったかくなるホットケーキだよ! さあ、食べて食べて~」
平皿には、こんがり焼けたホットケーキが二枚重なっている。上にはバターとはちみつがたっぷり。お、美味しそう~!
「いただきます!」
ナイフで一口大に切って、ぱくっと口に入れる。その瞬間、大きく目を見開いた。
はちみつの甘さが幸せを運ぶように身体中を駆け巡っていく。ふかふかの柔らかな生地にも、心がホッした。
美味しい! すごく美味しい! だけどそれだけじゃない。ひだまりに包まれたような、ポカポカとあったかい気分になった。
それにこの味、お母さんが作ってくれたホットケーキによく似ている。材料が同じだから? 私が作っても、同じ味にはならなかったのに不思議。
ホットケーキを食べていると、幸せだった頃の記憶が蘇る。胸がいっぱいになって、再び涙が溢れ出した。
「育ちゃん? なんで泣くの? 美味しくなかった?」
天音くんがギョッと目を見開く。これ以上心配かけないように、私は大きく首を振った。
「違うの。美味しくて……」
どうにか言葉を絞り出す。ダメだな、私。今日は泣いてばっかりだ。
涙を拭ってから、もう一度ホットケーキを口にする。さっきよりも、ちょっとしょっぱい。これはバターの塩気のせいではなさそうだ。私が悲しんでいるわけではないと分かると、天音くんはホッと胸を撫でおろす。
「良かった。気に入ってもらえて」
その後も夢中でホットケーキを食べていると、正面に座る天音くんがとろけるような笑顔を浮かべていた。
「な、なに?」
驚いて尋ねてみると、天音くんははちみつよりも甘い言葉を口にした。
「育ちゃんは僕のこと好きだよね? 僕も育ちゃんのことだぁいすき」
ホットケーキを食べる手が止まる。今、大好きって言った? 天音くんが、私のことを?
これまでも懐かれていると感じることはあったけど、直接好きと言ってもらえたのは初めてだ。素直に気持ちを伝えてくれたのは、すっごく嬉しい。
心臓は破裂しそうなほどに暴れまわっている。顔も熱くて仕方ない。こんなに心を乱されているってことは、私も天音くんのことが……。
気持ちを確かめるため、天音くんと過ごした日々を振り返る。
天音くんと出会った日、一緒にご飯を食べようと誘ってくれたこと。未来の私が病気になってしまうと知った時、食生活をサポートすると約束してくれたこと。クラスメイトから責められた時、機転を利かせてかばってくれたこと。嵐の中、びしょ濡れになって駆け付けてくれたこと。
天音くんは、いつだって優しかった。そんな男の子のことを、好きじゃないはずがない。
「育ちゃん、これからもずっと傍にいようね。育ちゃんを僕で満たしてあげる」
天音くんは愛おしいものを見るように微笑む。そんなに甘すぎる愛情表現をされたら、どうすればいいか分からないよ~!
顔から火が出そうになった時、リビングの扉が大きな音を立てて開いた。
