「よしっ、提出完了!」

ひと仕事終えた私は、両手を上げてうーんと伸びをする。締め切りギリギリだったけど、どうにか間に合ってよかった。クライアントさんにも喜んでもらえるといいなぁ。達成感に満たされながら、私はパソコンに映し出された女の子のイラストを眺めていた。

私、来栖(くるす)育実(いくみ)は私立緑ヶ丘(みどりがおか)学園に通う、ごく普通の中学二年生。絵を描くことが大好きで、将来は売れっ子イラストレーターになることを夢見ているんだ。

小さい頃はスケッチブックに絵を描いていたんだけど、中学生になってから液晶タブレットを買ってもらったの。そこからデジタルイラストにも挑戦して、完成した作品をSNSに投稿してみたんだけど……。

それがまさかの大バズり! たくさんの人から「可愛い」と褒められて、瞬く間に人気になったんだ! 今ではSNS経由でお仕事の依頼も来るようになったの。

ついさっきもクライアントさんにイラストを提出したところ。SNSのアイコンで使う似顔絵を描いてほしいって依頼されたんだ。

自分じゃない誰かのためにイラストを描くのってセキニン重大だけど、私の描いたイラストで誰かに喜んでもらえると考えるとワクワクするんだ。
勉強との両立は大変だけど、私のイラストを必要としてくれる人がいる限り、このお仕事を続けていきたいと思っているよ。

イラストを提出してから数分経った頃、新着メッセージが届いた。
さっそくクライアントさんから返信だ。私は緊張した面持ちでメッセージを開いた。

【ご納品いただいたイラスト、確認しました。イメージ通りで感動しました。ほんわかした色合いでとっても可愛いですね! いくみん様にお願いして良かったです。ありがとうございました。】

メッセージを読み終えると、へにゃへにゃと力が抜けていった。

「よ、よかったぁ~」

クライアントさんにも気に入ってもらえたようだ。頑張って描いてよかったぁ。

安心しきったところで、ぎゅるる~とお腹の虫が鳴る。そういえば、イラストを描くのに夢中になって、ご飯を食べるのを忘れていた。私はフラフラと椅子から立ち上がって、キッチンへ向かった。