ぽかんと口を開けながらみんなの顔を見渡していると、ハーフアップのお兄さんが深々とため息をついた。
「本当は隠しておくつもりだったけど、しょうがないか。ちゃんと説明するよ」
背筋を伸ばして話を聞く体勢になると、ハーフアップのお兄さんは真剣な表情で話し始めた。
「俺たちは、ある人物の願いからこの時代に派遣されたんだ。来栖育実の食生活を改善するようにという指令を受けてな。俺たちはもともと食べ物に含まれる栄養素だったんだけど、来栖育実とコミュニケーションをとるためにこの肉体を与えられた」
「私の食生活を改善するために栄養素が擬人化したってこと? 一体誰がそんなことを……」
「それは言えない。言ってはいけない決まりになっているんだ」
ハーフアップのお兄さんは、強い口調で言い切る。みんなを派遣した人物については気になるけど、こうもはっきり断られるとそれ以上追及することはできなくなった。ぴりっとした空気が漂う中、天音くんが眉を下げながら訴える。
「でもね、これだけは言えるんだ。育ちゃんが今のままの食生活を続けていたら、遠くない未来に病気になってしまうんだ」
「病気!?」
深刻な話が飛び出して、大声を上げる。今のところは身体の不調は感じていないけど……。
「嘘じゃないよ。僕たちは育ちゃんの未来を知っているから。病気になった育ちゃんは、やりたいことを我慢して闘病生活を送ることになるんだ。夢だって叶えられなくなるんだよ」
夢が叶えられなくなる。それは私にとって大問題だ。将来は売れっ子イラストレーターになる。その夢を叶えるために、頑張ってイラストのお仕事も受けているのに……。病気のせいで夢を諦めるなんて、絶対に嫌だ。
「病気になんてなりたくない」
恐怖で声が震えている。病気になるなんて、想像しただけで怖い。怯えている私を安心させるように、天音くんが肩に手を添えた。
「そうならないためにも、僕らが派遣されたんだ。育ちゃんが元気に過ごせるように、僕たちが精一杯サポートするよ」
天音くんの言葉で、ハッと気付く。そうか。今から食生活を改善すれば、病気になる未来を回避できるんだ。
未来を変えるためにも、今を変えなければ――
「天音くん! 病気にならないためにはどうしたらいいの?」
縋るように尋ねると、天音くんはにっこりと微笑んだ。
「簡単なことだよ」
私のもとから離れた天音くんは、他の食育男子と一列に並ぶ。みんなの顔を順番に見つめていると、天音くんは右手を差し伸べながら答えた。
「僕たちをバランスよく愛して」
天音くんの言葉が、脳内で何度も響く。愛する? 私が? 食育男子を?
いやいやいや! そんなの無理だよ! 愛なんてよく分からないし、そのうえ五人同時にバランスよく愛するなんて!
レストランに来ただけなのに、とんでもない事態になってしまったようです。
「本当は隠しておくつもりだったけど、しょうがないか。ちゃんと説明するよ」
背筋を伸ばして話を聞く体勢になると、ハーフアップのお兄さんは真剣な表情で話し始めた。
「俺たちは、ある人物の願いからこの時代に派遣されたんだ。来栖育実の食生活を改善するようにという指令を受けてな。俺たちはもともと食べ物に含まれる栄養素だったんだけど、来栖育実とコミュニケーションをとるためにこの肉体を与えられた」
「私の食生活を改善するために栄養素が擬人化したってこと? 一体誰がそんなことを……」
「それは言えない。言ってはいけない決まりになっているんだ」
ハーフアップのお兄さんは、強い口調で言い切る。みんなを派遣した人物については気になるけど、こうもはっきり断られるとそれ以上追及することはできなくなった。ぴりっとした空気が漂う中、天音くんが眉を下げながら訴える。
「でもね、これだけは言えるんだ。育ちゃんが今のままの食生活を続けていたら、遠くない未来に病気になってしまうんだ」
「病気!?」
深刻な話が飛び出して、大声を上げる。今のところは身体の不調は感じていないけど……。
「嘘じゃないよ。僕たちは育ちゃんの未来を知っているから。病気になった育ちゃんは、やりたいことを我慢して闘病生活を送ることになるんだ。夢だって叶えられなくなるんだよ」
夢が叶えられなくなる。それは私にとって大問題だ。将来は売れっ子イラストレーターになる。その夢を叶えるために、頑張ってイラストのお仕事も受けているのに……。病気のせいで夢を諦めるなんて、絶対に嫌だ。
「病気になんてなりたくない」
恐怖で声が震えている。病気になるなんて、想像しただけで怖い。怯えている私を安心させるように、天音くんが肩に手を添えた。
「そうならないためにも、僕らが派遣されたんだ。育ちゃんが元気に過ごせるように、僕たちが精一杯サポートするよ」
天音くんの言葉で、ハッと気付く。そうか。今から食生活を改善すれば、病気になる未来を回避できるんだ。
未来を変えるためにも、今を変えなければ――
「天音くん! 病気にならないためにはどうしたらいいの?」
縋るように尋ねると、天音くんはにっこりと微笑んだ。
「簡単なことだよ」
私のもとから離れた天音くんは、他の食育男子と一列に並ぶ。みんなの顔を順番に見つめていると、天音くんは右手を差し伸べながら答えた。
「僕たちをバランスよく愛して」
天音くんの言葉が、脳内で何度も響く。愛する? 私が? 食育男子を?
いやいやいや! そんなの無理だよ! 愛なんてよく分からないし、そのうえ五人同時にバランスよく愛するなんて!
レストランに来ただけなのに、とんでもない事態になってしまったようです。
