若頭は拾い猫を甘やかしたい。

「あと、弥生でいーよ。」


「弥生?お兄さんの名前で呼んでいいの?」


「そ。お兄さんはなんかマズイだろ。」



まずいって何が…?

まぁいいや。でもどうせ今日でお別れだろうし。
名前で呼んじゃったら情が湧いちゃいそう。



「私、どうやって帰れば良いの?」


「…ん?」



お兄さんの顔がピキっと固まった。

そしてすぐに口を開いて、



「都、今日から帰らなくていいよ。」



私からしたらとても驚く言葉を声にした。

帰らなくていいって、どういうこと…?



「どうして?」

「都のことは俺が今日から引き取るから。」

「……え?」


お兄さんが、私を引き取る?
今日から?


「お兄さんと、私が一緒に暮らすってこと?」


「そーいうこと。嫌だ?」



あの地獄に帰らなくていいの?そんな事が起きたりするものなの?

でもどうして?……あ、そっか分かった。



「お兄さんは "労働" して欲しいの?私に。」




きっと、困ってるんだ。お兄さんも。

孤児院の先生たちは皆そうだったから。