若頭は拾い猫を甘やかしたい。

孤児なんてきっと普通ではない。

皆にはお母さんが居て、お父さんが居て、それぞれに家族という形がある。


だけど生まれつき、私には名前だけが贈られてすぐに孤児院の前に捨てられた。



孤児院には私みたいな子が沢山いて、皆孤独だった。


先生たちは育ててやっているからという理由で私たちを奴隷のように扱った。


怖くて、辛くて、苦しくて、私は度々孤児院から逃げるようになった。


あそこにいるくらいなら、昨日みたいな大雨の日でもきっと台風の日でも、外にいる方が苦しくなかったから。



「あーごめん。悪いこと聞いたな。」


「へ…。」



男の人の指が私の瞳に優しく触れて、いつの間にか流れていた涙を拭き取ってくれた。

その手つきがやけに優しくて、心地いい。



「お兄さん、優しいの?」


「ふっ、いや?俺なんて優しくないよ全然。」



そう言うけど、私の頭をなでなでして来るお兄さんの顔は本当に優しくて、

今までにこんなに優しく触れられたこともなかったから凄く不思議な感じがする。