若頭は拾い猫を甘やかしたい。

確か私はドラム缶の中に居て、大雨で…。

だけど急に手を差し伸べてきた黒づくめのお兄さん。

もしかして、この人が…?



「…まぁ、そうだな。間違ってない。」


「お兄さんがこのフワフワの場所に連れてきてくれたの?」


「フワフワ?あー、毛布のことか。そーそー。俺が連れてきた。」



威圧感がある声にしては、話し方は少し柔らかさを感じる。

今まであってきたこういうタイプの声の人は、全員悪魔みたいに怖い人たちだった。



「おい、大丈夫か。」


「へ、あ、うん。大丈夫。」



でも分からない、このお兄さんも豹変して急に酷いことをしてくるかもしれない。


この世に私に優しくしてくれる人なんて居ないから。


「お前、名前は?」



" 名前 "

これだけは私がずっと大切にしてる。だって唯一の両親からの贈り物だから。