若頭は拾い猫を甘やかしたい。

…何この広さ。凄い大きいお家だったんだ。


廊下を進んでいくと部屋がいくつも見当たるし、掃除をしている人や制服のようなものを来て歩き回っている人が複数見当たる。


この人たちも皆、ヤクザなのかな。



「着いたぞ。」


いつの間にかあの広い廊下から玄関を通って外に出た。


駐車場まで一般家庭では有り得ないほどの広さだ。


「おい、柳城(やなしろ)。挨拶しろ。」



すると弥生くんが柳城、という人に向かって挨拶を促して、背が高くてスラッとした男の人が私の前に立った。


「初めまして。今日から月夜様の送迎を担当させていただく柳城 瞬と言います。よろしくお願いします。」



何やら自己紹介をすると、私に向かって深く頭を下げた。

…えぇ、本当に私専用の送迎ていうものが…。




「…月夜、都です。こちらこそお願いします。」



お礼にという気持ちを込めて私も深く頭を下げる。



「柳城、都に変なことしたら殺すからな。」

「はいはい。分かってますって。」





私には聞こえない声でボソボソと話す2人。

…何話してるんだろう。


だけどすぐに柳城さんがこちらに寄ってきて、




「それでは月夜様、早速学校の方へ向かいましょう。」



黒い車の後部座席のドアを開けてそう言った。