若頭は拾い猫を甘やかしたい。

私がそう言うと、弥生くんは目を丸くして驚いた顔をした後に、


「はぁーーーー。」



と長い溜息をついて顔を手で覆った。

え、どうしたの。私は何か今ダメなことを言ってしまったのだろうか。


「都、そこは抵抗するとこだから。すんなり受け入れないで、可愛いけど。」


「え、でも弥生くんが自分で言ったよ。」



「冗談だよ、ほんと危機感無さすぎ。」



えぇ、何それ。弥生くんって冗談とか言ったりするキャラだったんだ。

それに今この場面でどうして危機感が必要なのか。



「じゃあ自分で着替えるもん。」


「ほっぺ膨らましてもただ可愛いだけだから。俺外に出とくから着替えたら言ってね。」



弥生くんは私のほっぺをむぎゅっと潰して部屋を出て行った。


誰もいなくなった部屋で服を脱いで制服に着替える。

いつも誰もいない孤児院の部屋は寂しさを感じてしまうのに、今日は不思議と1人になっても寂しさを感じない。


これも全部、弥生くんのおかげなのかな。


なんて思いながら外にいる弥生くんの名前を呼ぶ。



「弥生くん、着替えた。」

「ん。じゃあ行くか。」



着いて来てと言われて、部屋を出てついて行くと広い廊下が顕になった。