妃候補なんて興味ありません!

「それを長期間置いておいてくださるなんて、なんて素晴らしい方なのかしら」
口々にシーラを蔑み、フィリップを持ち上げる姫君たち。

普段は陰口など気にしないシーラだけれど、誰かを持ち上げるために蔑まれるのは不愉快だった。

ムッと唇を引き結んで黙り込む。
そんなシーラに気がついたフィリップ王子が他の姫君たちを鎮めようとした、そのときだった。

フィリップ王子の青い瞳に大きな龍が写っていた。
姫君たちのざわめきは一瞬して消え去り、代わりにか細い悲鳴が聞こえてくる。

シーラの後から突如現れた龍は一気に天井まで舞い上がったかと思うと、フィリップたちの目の前を通り過ぎ、長いテーブルを駆け抜けた。

龍が空中を走ったあとには強風が残り、姫君たちが本格的な悲鳴を上げて自分の髪の毛が舞い上がらないように必死に抑え込んだ。