妃候補なんて興味ありません！

「あらぁ？　もしかしてなにもできないのかしら？」
立ち尽くしてしまったシーラにそんな声が飛んできた。

声の主は昼間井戸で水浴びをしているシーラを見て笑っていた２番妃と５番妃だ。
たしか、エヴァとアネットという名前だったはず。

エヴァは得意の刺繍をプレゼントしていたし、アネットは珍しい花を渡していた。

ふたりともシーラとは比べ物にならないくらい豪華なドレスを身にまとい、輝かしい宝石で着飾っている。

「自分で料理をするなんて、どんな生活をしているのかしら」
アネットのそんな言葉を火切りにして他の姫君からも笑い声が漏れる。

姫君たるもの身の回りのことはすべて使用人たちがするのが当然だ。
刺繍や舞などを趣味にしている姫君は多いが、料理に手を出す人はほとんどいない。

フィリップ王子は困ったように眉を寄せた。
「いや、無理になにかをしろとは言わないが」

と、どうにか自体を収めようとしている。
「フィリップ王子はお優しいのね。こんな子にまで気を使うなんて」

「本当ならとっくに追い返されていても普通なんじゃなくて？」