復讐殺人日記

と、内心歯噛みする。
「あいつが書いてた小説読んだ?」

「読んだ読んだ! 飛び降り自殺したヤツの話だろ? あれが遺書だったってみんな思ってるよな」

そんな会話が聞こえてきて視線を向けると、サッカー部の二人組が興奮気味に会話しているのが見えた。

「あのときノートを落として正解みたいだね」
そっと声をかけてきたのは日奈子だった。

日奈子は昨日からずっと顔色が悪くて、今日は休むんじゃないかと思ったけれど登校してきていた。

瑞穂も、もちろん来ている。
みんな昨日の出来事が気になって当然だった。
「そうだね。あの時読んだんだろうね」

グランドで練習していたサッカー部や陸上部の生徒たちが興味本位で保人の小説を読んだことは、今朝になって知ったことだった。

しかもそれが遺書に近い内容だったというのは、まさしく天からの助けだった。

「このまま自殺で片付けられる。大丈夫だって」
貴斗はもう一度そういい、白い歯をのぞかせて笑ったのだった。