復讐殺人日記

そのたびに自分のお小遣いで買い替えているようだから、保人ももう手出しさせまいと必死だった。

「それも、やめて! お願いだから!」
保人が駆け寄ってこようとしたとき、その首根っこを貴斗が掴んで止めた。

貴斗はまるで母猫に加えられた子猫みたいにおとなしくなる。
「もちろん返してあげるよ。だけど自分で取れたらね?」

私はそういうとフェンスによじ登り、真下へと教科書を落とした。
フェンスの向こう側にある狭い通路、パラペットと呼ばれる場所にうまく落下した。

だけど強い風がふけばすぐに落ちて行きそうな場所だ。
「はい。取りに行っていいよ?」

私の言葉を合図にして貴斗が保人の手を離す。
保人はフラフラとフェンスに近づいていき、泣きそうな顔をこちらへ向けた。

「早くしないと落ちちゃうかもよ?」
パラペットの上の教科書は今絶妙なバランスを保っている。

いつ落ちても不思議じゃなかった。
保人がゴクリと唾を飲み込む音が聞こえてきた。

そして右足をフェンスに引っ掛ける。