「桐谷さん。クロム憑きは残酷かもしれないけど、それでも私は奇跡だと思うよ」
「えっ……?」
「私たちが安東くんに再び、会えたのは、クロム憑きの奇跡があったから。そう思わない?」
井上先輩の言葉は心に染み渡り、同時にわたしの背中を押した。
ずっとずっと心の奥底に閉じ込めていた言葉が心の端から流れ出す。
「わたし……わたし……、渚くんが大好き。これからも渚くんと一緒にいたい。渚くんのことをずっと忘れたくない」
「心配しなくても、安東くんの瑠璃色の想い――『夢魂』は、桐谷さんに届けるにゃ。安東くんと桐谷さんは、私の命の恩人だからね」
「…………っ。それって……」
井上先輩の意味深な笑みに、理性よりも先に、直感が結論を出した。
思い出すのは、雨上がりの空。
『ねこさん、どうしたの? もしかして、はぐれたの?』
無性に寂しさを漂わせている目。
ちょうど、日が沈みかけた頃合いの夜色の瞳。
その青さは……井上先輩の瞳と同じだった。
「安東くん、桐谷さん。これは、私たちだけの秘密だにゃー」
井上先輩は内緒話をするように、唇に人差し指を当てる。
ほんのちょっぴりおどけた仕草で、くるりと一回り。
その仕草が、あの時の猫と同じで。
井上先輩は……本当に猫神様なんだーー。
そう思った瞬間、どうしようもない想いが、涙と一緒に溢れた。
(『ありがとう』とか『感謝』とかじゃ言い表せない。そういう言葉じゃ全然足りない)
これ以外では、この気持ちをうまく言い表す自信がなくて。
(わたしたちの神様……)
……知らなかった。
すごく嬉しい時も、こんなふうに恋をしている時みたいにドキドキするんだ。
この世界には、小さな奇跡がいくつもある。
願いを込めて。想いを込めて。
ずっと、ずっと……。
どこまで行ってもーーきっと、わたしのそばには猫がいた。
「えっ……?」
「私たちが安東くんに再び、会えたのは、クロム憑きの奇跡があったから。そう思わない?」
井上先輩の言葉は心に染み渡り、同時にわたしの背中を押した。
ずっとずっと心の奥底に閉じ込めていた言葉が心の端から流れ出す。
「わたし……わたし……、渚くんが大好き。これからも渚くんと一緒にいたい。渚くんのことをずっと忘れたくない」
「心配しなくても、安東くんの瑠璃色の想い――『夢魂』は、桐谷さんに届けるにゃ。安東くんと桐谷さんは、私の命の恩人だからね」
「…………っ。それって……」
井上先輩の意味深な笑みに、理性よりも先に、直感が結論を出した。
思い出すのは、雨上がりの空。
『ねこさん、どうしたの? もしかして、はぐれたの?』
無性に寂しさを漂わせている目。
ちょうど、日が沈みかけた頃合いの夜色の瞳。
その青さは……井上先輩の瞳と同じだった。
「安東くん、桐谷さん。これは、私たちだけの秘密だにゃー」
井上先輩は内緒話をするように、唇に人差し指を当てる。
ほんのちょっぴりおどけた仕草で、くるりと一回り。
その仕草が、あの時の猫と同じで。
井上先輩は……本当に猫神様なんだーー。
そう思った瞬間、どうしようもない想いが、涙と一緒に溢れた。
(『ありがとう』とか『感謝』とかじゃ言い表せない。そういう言葉じゃ全然足りない)
これ以外では、この気持ちをうまく言い表す自信がなくて。
(わたしたちの神様……)
……知らなかった。
すごく嬉しい時も、こんなふうに恋をしている時みたいにドキドキするんだ。
この世界には、小さな奇跡がいくつもある。
願いを込めて。想いを込めて。
ずっと、ずっと……。
どこまで行ってもーーきっと、わたしのそばには猫がいた。



