「お願いしたいこと?」
お母さんは淡々と投げやりに訊く。
「わたし……猫を飼いたいの……」
「はあ……?」
わたしの弱々しい声に、お母さんは明確に嫌悪感を示した。
「どうしても飼いたいの。お父さんとお母さんが許してくれなくても、これだけは絶対に諦めたくない!」
「なに言っているのよ! 猫を飼うということは、猫の命を預かることに繋がるのよ! それに前から、猫は嫌いって言っているでしょう! 変なこと言わないでよね!」
お母さんの声と表情には、衝撃が張り付いていた。
その剣幕に驚きつつも、わたしはここで怯むわけにはいかなかった。
絶対に猫を飼いたい――。
答えはとっくに出ているから。
自分の気持ちはぜんぶ、分かっている。
でも、それをきちんと自分の口から説明するのは勇気がいることだった。
「お母さん。どうしても、再会したい大切な子がいるの。だから、絶対に飼いたいの!」
「いい加減にしなさい! なに、訳の分からなことを言っているの!」
お母さんの鋭い声に、わたしはうつむき、手のひらに汗がにじむ。
肩が、意志とは関係なく震える。
『変なこと言って、ごめんなさい』
ここで、本当に言いたい言葉を飲み込めば、お母さんの怒りはきっと静まるはずだ。
だけど……でも……。
『冬華なら、どんなことでもできるよ』
不安が膨らむ中、渚くんの声が導くように響いた。
そのとたん、目の奥が熱くなり、じわりと涙が浮かんでくる。
やっぱり、渚くんの言葉は魔法だ。
いつも、くじけそうになった時に力をくれる。
「お母さん。わたしは本気だよ! 本気で猫を飼いたい! 猫のために、自分のできることをせいいっぱいやりたいの!」
わたしが正直に答えると、お母さんはあからさまに落胆の色を見せた。
「……はあっ。猫のために、というのなら、猫嫌いの人がいる家より、猫好きの人がたくさんいる家の方がいいと思うわよ」
「それは……」
お母さんの的確な指摘に、わたしはぐっと唇を噛みしめる。
「わざわざ猫を飼わなくても、冬華はベルちゃんといつでも会えるわよね」
「そうだけど……」
言葉を詰まらせたわたしを見て、お母さんが呆れたようにため息を吐いた。
「それに……猫のために何かをしたいなら、猫巡り部の活動をもっと頑張ればいいだけの話でしょう?」
「お母さん、お願い! わたし、どうしても、猫を飼いたいの!」
わたしは全力で思いの丈をぶつける。
これで、お母さんが少しでも、わたしの想いに目を向けてくれたら……。
そんな甘い考えがよぎったけど、その願いは叶わない。
短くため息をついたお母さんは、そのまま台所に行ってしまった。
お母さんは淡々と投げやりに訊く。
「わたし……猫を飼いたいの……」
「はあ……?」
わたしの弱々しい声に、お母さんは明確に嫌悪感を示した。
「どうしても飼いたいの。お父さんとお母さんが許してくれなくても、これだけは絶対に諦めたくない!」
「なに言っているのよ! 猫を飼うということは、猫の命を預かることに繋がるのよ! それに前から、猫は嫌いって言っているでしょう! 変なこと言わないでよね!」
お母さんの声と表情には、衝撃が張り付いていた。
その剣幕に驚きつつも、わたしはここで怯むわけにはいかなかった。
絶対に猫を飼いたい――。
答えはとっくに出ているから。
自分の気持ちはぜんぶ、分かっている。
でも、それをきちんと自分の口から説明するのは勇気がいることだった。
「お母さん。どうしても、再会したい大切な子がいるの。だから、絶対に飼いたいの!」
「いい加減にしなさい! なに、訳の分からなことを言っているの!」
お母さんの鋭い声に、わたしはうつむき、手のひらに汗がにじむ。
肩が、意志とは関係なく震える。
『変なこと言って、ごめんなさい』
ここで、本当に言いたい言葉を飲み込めば、お母さんの怒りはきっと静まるはずだ。
だけど……でも……。
『冬華なら、どんなことでもできるよ』
不安が膨らむ中、渚くんの声が導くように響いた。
そのとたん、目の奥が熱くなり、じわりと涙が浮かんでくる。
やっぱり、渚くんの言葉は魔法だ。
いつも、くじけそうになった時に力をくれる。
「お母さん。わたしは本気だよ! 本気で猫を飼いたい! 猫のために、自分のできることをせいいっぱいやりたいの!」
わたしが正直に答えると、お母さんはあからさまに落胆の色を見せた。
「……はあっ。猫のために、というのなら、猫嫌いの人がいる家より、猫好きの人がたくさんいる家の方がいいと思うわよ」
「それは……」
お母さんの的確な指摘に、わたしはぐっと唇を噛みしめる。
「わざわざ猫を飼わなくても、冬華はベルちゃんといつでも会えるわよね」
「そうだけど……」
言葉を詰まらせたわたしを見て、お母さんが呆れたようにため息を吐いた。
「それに……猫のために何かをしたいなら、猫巡り部の活動をもっと頑張ればいいだけの話でしょう?」
「お母さん、お願い! わたし、どうしても、猫を飼いたいの!」
わたしは全力で思いの丈をぶつける。
これで、お母さんが少しでも、わたしの想いに目を向けてくれたら……。
そんな甘い考えがよぎったけど、その願いは叶わない。
短くため息をついたお母さんは、そのまま台所に行ってしまった。



