無口な彼の内情を知ったら、溺愛されるようになりました……!?


「みなさん。明日は、お待ちかねの文化祭ですね。今日まで準備、お疲れ様でした」

 パパは、準備を頑張っていたみんなを労った。
 話が終わりに入った時。パッと明るい照明が私に向けられた。

「っ!?」

「みなさんの時間を頂いて、大変恐縮なのですがーー今日は、娘の紫の婚約者発表も行わせて頂きます」

 え、えええええええっ!?
 私は、ふと二ヶ月前にパパが言っていたことを思い出した。

『二ヶ月後に控えた文化祭の前夜に、緑谷家の子息かもう一人のどちらを婚約者にするか決めてもらう。そして、報告を兼ねたパーティーを行う』

 と。
 まさか、学校の文化祭の前夜祭で発表するなんて……!

 私の気持ちはもう決まっているけど、こんな大勢の人の前でっ……。
 緊張から体が固まってしまった。
 きゅっと強く目を閉じて俯いた。ドレスの裾をきゅっと強く握ると、私の手に重ねて温かく角張った大きな手が重ねられた。

 ゆっくりと目を開けると、俯いたままでも誰の姿か確認できた。

 翡翠くんが、跪いて私の手を握っていた。

「ひ、翡翠くんっ……!?」

「ーー俺に、委ねてくれ」

 その声は、私にしか聞こえない大きさだったけれど、とても安心できる優しい声だった。