無口な彼の内情を知ったら、溺愛されるようになりました……!?


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 九月上旬。夏休みが終わり、暦の上ではとっくに秋なのに、まだまだ暑い日が続く。そんな暑い中で私達はーー。

「そうですね。内装はーーこのようにして下さいますか?」

「資材はこれで。二日間持ち堪えれば良いので、外観よりも商品の方に力を入れます」

 絶賛、文化祭の準備中。

 この学校の文化祭は、どうやら他の学校とは違うらしい。他の学校は、クラスごとに模擬店をしたり、部活動ごとに出し物をしたりするらしい。そして、みんなで一致団結し一層友情を育むのだとか。
 しかし、この学校は広大な敷地を利用して個人が出店する。強制ではなく、自主参加。参加する生徒のほとんどは、将来的に親の会社を継いで経営に携わる人や自分で会社を経営したいという人。
 著名な親を持つ子どもが通う学校の催しに、ここぞとばかり関係を築こうとする大人も多い。
 文化祭で、商売の才能を見出され利益につながる事も多々あるらしい。だから、出店へ参加する人達は全力を尽くす。

 ちなみに、私はーー出店へ参加しない。将来的に、経営の軸になるのはお兄ちゃん。だから、私はーー。

「村崎さーん! こっちお願いして良いー?」

「村崎さん、こっちもー!」

「は、はいー! すぐ行きまーす!」

 いつもと変わらず、みんなのお手伝い。
 少しでも、頑張ってるみんなの力になりたいと思った決断だ。