『ふっ。俺の前で取り繕う必要はない』
「へ?」
『お父さんのこと、パパと呼べば良い。俺と話す中で、気なんて遣うな』
私が言い直した事を笑いながら指摘する彼。電話越しで笑われ、からかわれたのが恥ずかしくて言葉を返そうとした時。
ーーコンコン。
ドアをノックする音が聞こえ、話すのをやめた。
『来客か?』
突然、話をやめたから翡翠くんがそう言った。
「紫様。お食事のご用意が出来ました。旦那様も奥様もお揃いです」
「あっ、えとーーひ、翡翠くんっ。ちょっとごめんね……!」
聞いていた時間よりも早く、両親を待たせるわけにはいかない。早く畠山さんに返事をしないと……! でも、今は翡翠くんと電話してるから、電話もなんとかしないと。
一度に、三つのことをこなそうと一人でわたわたしていると、また電話越しに彼がくすっと笑った。
『俺のことは気にするな。両親との食事、楽しんでくれ。また明日。都合の良いタイミングで』
そう言うと、電話は切られてしまった。
ーーまだ、話したかったな。
電話が切れ、真っ暗になった画面をじっと見つめて寂しい気持ちに襲われた。
でも、いつまでも残念がってなんていられない。私は、部屋から出て畠山さんと食堂へ向かった。

